精神障害を開示して働くITエンジニアの実体験

「精神障害を開示しても、ITエンジニアは続けられるのか?」

私は精神障害を抱えながら働くITエンジニアです。
現在は精神障害者保健福祉手帳2級を取得し、合理的配慮として勤務時間を調整してもらいながら働いています。

  • 障害を開示すると不利になるのでは?
  • 評価や年収に影響するのでは?
  • クローズ就労はバレるのか?

この記事では、障害を開示して働くエンジニアの実体験をもとに、IT業界の現実とあわせて解説します。

この記事は「精神障害の開示ガイド」の一部です。
開示の判断基準やタイミング、転職戦略まで含めて整理したい方は、精神障害の開示ガイド(総合まとめ)をご覧ください。

エンジニアは精神障害を開示すべき?IT業界の現実

精神障害を開示して働くITエンジニアのイメージ
精神障害を抱えるITエンジニアにとって、「障害を開示すべきかどうか」は大きなテーマです。開示すると評価が下がるのではないか、不利な扱いを受けるのではないか、と不安になる人は少なくありません。

一方で、IT業界は成果主義の側面が強く、スキルやアウトプットが評価されやすい業界でもあります。

実際に私は精神障害を開示して働いていますが、業務評価が下がったことはありませんでした。むしろ、合理的配慮が明確になったことでパフォーマンスが安定し、結果的にチームへの貢献度は上がったと感じています。

ITエンジニアにとって重要なのは、開示するかどうかではなく、自分が安定して成果を出せる環境を作れるかどうかです。

IT業界はメンタル負荷が高くなりやすい

IT業界はリモートワークや裁量労働が広がっている一方で、

  • 納期プレッシャー
  • 長時間労働
  • チーム開発でのコミュニケーション負荷

など、精神的な負担がかかりやすい環境でもあります。

特にシステムエンジニアやプログラマーは、集中力と対人調整の両方が求められます。

開示は「オープン就労」か「クローズ就労」かの二択ではない

私は入社当初から「持病がある」ことは共有していました。

ただし、

  • 障害者手帳の取得
  • 障害者雇用枠への変更

については一部の関係者のみに共有しています。

完全オープンでも完全クローズでもない、バランス型の開示です。開示は白か黒ではなく、グラデーションという選択肢もあります。

障害を持つエンジニアが障害者手帳2級を取得した理由

私が精神障害者保健福祉手帳2級を取得したきっかけは、自分から積極的に動いたというより、上司の一言でした。

結果として2級を取得しましたが、大きく変わったのは「お願いベース」だった配慮が「制度ベース」になったことです。勤務時間の調整や体調面への配慮が、個人の交渉ではなく制度として整理されたことで、精神的な安心感が増しました。

手帳取得のきっかけ

きっかけは自分発信ではありません。上司に相談したところ「しんどそうだし、一度申請とかしてみたら?」という一言が始まりでした。

申請方法を調べながら等級を調べたところ、自分は2級に該当しそうだなあ…と思っていました。そして想像通り、申請の結果は2級でした。

制度として合理的配慮を受けられる状態になった

精神障害者保健福祉手帳を取得したことで、

  • 合理的配慮の根拠が明確になる
  • 勤務時間の調整が制度的に可能になる

という変化がありました。

障害を開示してITエンジニアの働き方はどう変わったか

精神障害を開示後に勤務時間を調整して働くITエンジニア
障害を開示して最も大きく変わったのは勤務時間です。一般的な9時〜18時勤務から、9時〜17時へ1時間短縮してもらいました。この1時間の差は想像以上に大きく、疲労の蓄積が減り、通院や休息の余裕が生まれました。

また、「無理をしない前提」で業務を設計できるようになったことも大きな変化です。体調が不安定な日は早めに相談できる環境があり、結果的に突発的な長期離脱を防ぐことにつながっています。

周囲の反応についても、心配していたほどの変化はありませんでした。普段通り会話ができ、業務上の関係性も変わりません。精神障害を開示することで孤立するのではないかという不安は、私の場合は杞憂でした。

勤務時間の合理的配慮(9時〜17時)

最大の変化は勤務時間です。

一般的な9時〜18時勤務から、9時〜17時へ1時間短縮。

この1時間で、

  • 疲労の蓄積が減る
  • 通院や休息の余裕が生まれる
  • パフォーマンスが安定する

という効果がありました。

周囲の反応はどうだったか

結論:ほとんど変化なし。

特別扱いされることもなく、気まずさもなくこれまで通り会話できました。

「開示したら距離ができるのでは?」という不安は杞憂でした。

心理的負担の変化

クローズ就労の場合、「バレないか」という緊張があります。

開示することで、その不安はなくなりました。精神的な安定は、エンジニアとしての集中力にもつながります。

エンジニアが障害を開示するメリット・デメリット

精神障害を開示するメリットとデメリットを比較するITエンジニア
精神障害を開示することには、メリットとデメリットの両面があります。まず最大のメリットは、合理的配慮を正式に受けられる点です。勤務時間の調整や業務量の見直しなどが制度として整理されることで、働きやすさが安定します。

一方で、企業文化によっては「配慮が必要な人」というラベルで見られる可能性もゼロではありません。

ただし、これは障害の有無というより会社の理解度の問題です。IT業界は人材不足が続いており、スキルを持つエンジニアは貴重です。

メリット① 合理的配慮を正式に受けられる

障害を開示する最大のメリットは、合理的配慮を制度として受けられることです。

私の場合は、勤務時間を9時〜17時に調整してもらいました。これは単なる「お願い」ではなく、精神障害者保健福祉手帳を取得していることで、会社側も正式な対応として扱ってくれました。

ITエンジニアの仕事は、長時間の集中や納期対応など、精神的な負荷が積み重なりやすい職種です。以前は「少し無理をすれば大丈夫」と思っていましたが、その“少し”が積み重なると確実にパフォーマンスが落ちていました。

勤務時間が1時間短くなったことで、

  • 疲労の回復が間に合う
  • 通院や休息に余裕ができる
  • 気持ちに余白が生まれる

という変化がありました。

「制度として守られている」という安心感は、想像以上に大きいです。

メリット② 長期的に働きやすい

IT業界では、短期的な成果よりも継続できることが重要です。

精神障害には波があります。環境ストレスや睡眠リズムの影響を受けやすい人も多いでしょう。

開示前は、「今日は大丈夫かな」と常に不安を抱えていました。開示後は、「今日は少し調子が悪いけど、無理しなくていい」と思えるようになりました。

結果として、

  • 仕事の質が安定した
  • 周囲との関係も変わらなかった
  • 自己否定感が減った

という変化がありました。無理をして働き続けるより、少し余裕を持つほうが結果的に良い循環になります。

デメリット① 評価や昇進への不安

一番気になるのは、やはりここだと思います。

「評価が下がるのではないか」
「責任あるポジションは任せてもらえないのではないか」

特にIT業界は成果主義の文化が強い会社も多く、残業対応や緊急対応が前提のポジションもあります。その中で配慮を受けている状態が、どう見られるのかは企業文化次第です。

ただ、これは“障害があるから”というより、その会社がどれだけ多様性に理解があるかの問題でもあります。

デメリット② キャリアの選択肢への不安

障害者雇用枠に変更した場合、求人の選択肢が狭くなる可能性はあります。

IT業界の障害者雇用求人は増えていますが、

  • 年収レンジ
  • 担当できる業務範囲
  • マネジメントポジションの有無

には企業ごとに差があります。「挑戦より安定」を前提に設計されている求人もあります。

そのため、自分は技術特化でいきたいのか、マネジメント志向なのか、どの程度の年収を目指したいのか。キャリアの方向性を整理してから選ぶことが重要です。

クローズ就労はバレる?IT業界でのリアル

クローズ就労で働くITエンジニアの不安を表すイメージ
精神障害を持つITエンジニアの中には、「クローズ就労(障害を開示せずに一般雇用で働く)」という選択をする人もいます。理由はさまざまで、「評価に影響したくない」「余計な説明をしたくない」「特別扱いされたくない」といった思いが背景にあることが多いです。

では、クローズ就労は本当にバレないのでしょうか。結論から言えば、“絶対にバレない”とは言い切れません。特にIT業界はチーム開発や納期管理が密接に関わるため、働き方の変化が周囲に見えやすい環境です。

バレるケース

クローズ就労(開示せず一般雇用で働く)場合でも、状況によっては説明が必要になることがあります。

例えば、

  • 突然の長期休職
  • 頻繁な欠勤や遅刻
  • 業務パフォーマンスの波が大きい
  • 通院が頻繁

などが重なると、チームへの影響が出るためです。

ITエンジニアは個人作業も多いですが、基本はチーム開発です。突然の離脱はプロジェクト全体に影響します。そのときに理由をどう説明するのかは、考えておく必要があります。

IT業界特有の事情

IT業界は比較的リモートワークや裁量労働が浸透しており、他業界より働きやすい面もあります。

一方で、プロジェクト単位で評価される文化も強く、成果主義の色合いが濃い企業もあります。

無理をしてパフォーマンスが落ちるよりも、安定した状態で成果を出すほうが評価されやすい場合もあります。「隠し続けること」が常に正解とは限りません。

障害者雇用枠と一般雇用、エンジニアはどちらを選ぶべきか

障害者雇用枠と一般雇用を比較するITエンジニア
精神障害を持つITエンジニアが悩むのが、「一般雇用で開示するか」「障害者雇用枠を選ぶか」という問題です。一般雇用は年収レンジやキャリアの幅が広い傾向がありますが、配慮は企業ごとの裁量に依存します。

一方で障害者雇用枠は、合理的配慮が前提となるため、働きやすさは高いケースが多いです。ただし、求人の数や年収レンジは企業によって差があります。

どちらが正解というよりも、自分の体調の安定度や将来設計に合わせて選ぶことが重要です。

一般雇用(オープン就労)

一般雇用はキャリアの幅が広く、年収レンジも高い傾向があります。

マネジメントや上流工程に挑戦しやすいのも魅力です。ただし、配慮は企業ごとの文化に依存します。

理解がある会社であれば問題ありませんが、そうでない場合は負担が増える可能性もあります。

障害者雇用枠

長く働き続けるためには、障碍者雇用という選択肢もあります。障害者雇用枠では、合理的配慮が前提となるため働きやすさは高い傾向にあります。

障害者雇用の場合のIT年収については、障害者雇用のITエンジニアの年収をご参考にしてください。

一方で、求人数は一般雇用より少なく、年収上限が抑えられている企業もあります。ただ最近は、ITエンジニア職の障害者雇用求人も徐々に増えてきています。

最終的に大事なのは「環境との相性」

精神障害があってもエンジニアは続けられます。

重要なのは、

  • 自分の特性を理解する
  • 無理をしない設計をする
  • 合わない環境に固執しない

ことです。環境が合えば、能力は発揮できます。

障害者雇用のITエンジニアの年収はどれくらい?

障害者雇用枠の年収は企業やポジションによって大きく差があります。

実際に厚生労働省の障害者雇用実態調査を見ると、障害種別や職種によって平均賃金に違いがあることが分かります。

一般雇用と比べるとやや低めになるケースもありますが、IT業界はスキル重視のため、経験や技術力次第で条件が大きく変わるのが特徴です。特にエンジニア職では専門性が評価されやすい傾向があります。

重要なのは、「障害者雇用だから年収が必ず下がる」と決めつけないことです。

IT企業における障害者雇用の求人状況

IT企業でも障害者雇用の求人は増えています。

法定雇用率の引き上げやダイバーシティ推進、リモートワークの普及が背景にあります。IT業界は在宅勤務との相性もよく、精神障害との親和性が比較的高い職種もあります。

ただし、

  • 求人の数はまだ一般雇用より少ない
  • 企業ごとの理解度に差がある

という現実もあります。

そのため、一般求人サイトだけでなく、障害者専門の転職支援を活用する方が効率的な場合もあります。

まとめ

私の答えは「続けられる」です。

ただし、

  • 無理をしない
  • 合理的配慮を活用する
  • 合わない環境に固執しない

ことが前提です。

もし今の環境で働きづらさを感じているなら、障害者雇用でITエンジニアに転職する方法を一度整理しておくことをおすすめします。

転職はすぐに決断する必要はありませんが、「選択肢を知っている」だけでも気持ちは軽くなります。

開示を前提に転職を考えている方は、転職完全ガイドもあわせて確認してください。

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