精神障害があるITエンジニアにとって、面接は単なる選考の場ではありません。
スキルや実務経験を評価される場であると同時に、「どのような働き方なら安定して成果を出せるか」を企業とすり合わせる場でもあります。開示の有無や合理的配慮の伝え方次第で、合否だけでなく提示年収や担当業務の範囲が変わることもあります。
本記事では、障害者雇用・クローズ就職それぞれの面接戦略、評価される回答例、失敗しない準備方法を具体的に整理します。
目次
精神障害があるITエンジニアの面接で見られるポイント

精神障害を抱えるITエンジニアが面接で見られやすいポイントは次のとおりです。
| 評価項目 | 企業が見ている点 | 回答の方向性 |
|---|---|---|
| 業務遂行能力 | 担当工程・使用技術・成果の具体性 | 値や改善事例を交えた説明 |
| 安定性 | 継続勤務・欠勤リスクの低さ | 通院・生活管理・勤務条件を明示 |
| 再発防止策 | ストレス対処・セルフマネジメント能力 | 具体的な対策と相談体制 |
特に障害者雇用の場合、合理的配慮の具体性は重要な判断材料になります。厚生労働省も合理的配慮の提供を義務化していますが、配慮は「申告が前提」です。
面接で業務への影響と必要な配慮を具体的に伝えなければ、企業側は適切な業務設計ができません。
① 業務遂行能力の具体性
ITエンジニア職では、「どの工程を担当し、どの技術を使い、どの成果を出したか」が評価の中心になります。例えば「JavaでWebアプリ開発を担当」では弱く、「Spring Boot環境でAPI設計を担当し、処理速度を20%改善した」といった実績ベースの説明が必要です。
精神障害がある場合でも、業務に支障が出ない範囲や働き方を明確に分けて説明できると信頼性が高まります。スキルと症状を混同せず、「業務能力は維持できている」という根拠を示すことが重要です。
② 安定して働ける根拠
企業が最も重視するのは「継続して働けるか」です。IT現場では急な欠勤や長期離脱がプロジェクト全体に影響するため、安定性は評価の重要項目です。
面接では、服薬管理、通院頻度、睡眠確保、セルフケア方法などを簡潔に整理します。例えば、
このように「条件+対処法」をセットで伝えると、企業側は業務設計を具体的にイメージできます。抽象的な説明ではなく、勤務時間・在宅可否・業務負荷などを明確にすることがポイントです。
開示する場合の面接の伝え方

経済産業省IT人材需給調査では、今後もIT人材不足が継続すると予測されています。つまり、スキルや実務経験が明確であれば、障害の有無だけで評価が決まる市場ではありません。
障害者雇用やオープン就職の場合、精神障害の開示は前提になります。ただし、症状の説明に時間を使いすぎると「リスク説明」になってしまい、評価は下がります。重要なのは「業務への影響」と「必要な配慮」を論理的に整理することです。
企業が知りたいのは診断名ではなく、「どのような環境であれば安定して成果を出せるのか」です。開示の基本的な考え方については、精神障害ITエンジニア開示ガイドで詳しく解説しています。
① 症状より影響を説明する
「うつ病です」と伝えるだけでは、企業側は業務影響を判断できません。重要なのは、症状そのものではなく業務にどう影響するかです。例えば、
- 長時間残業が続くと集中力が低下しやすい
- 睡眠不足が続くとパフォーマンスが落ちる
このように業務影響を示したうえで、
- 残業は月20時間以内を希望します
- 夜間対応がない環境であれば安定稼働可能です
と具体的な条件を提示します。
合理的配慮は「業務遂行に必要な範囲」であることが前提です。抽象的な配慮ではなく、勤務時間・業務負荷・在宅可否などを明確にすることで、企業側は業務設計を判断しやすくなります。
② 配慮と成果をセットで伝える
配慮を求めるだけでは不十分です。企業側は「その配慮によってどんな成果が出るのか」を知りたいと考えています。例えば、
週1在宅勤務があれば集中環境を確保でき、生産性を維持できます
このように、配慮と成果をセットで伝えることが重要です。
実際にIT企業では在宅制度やフレックス制度を導入する企業も増えています。
出典:経済産業省IT人材需給調査
もし配慮を求めるなら、次のように「安定性+具体条件+対処法」をセットで整理すると説得力が高まります。
クローズ就職の場合の注意点

クローズ就職(非開示)は、精神障害を企業に伝えずに一般枠で働く選択肢です。年収の幅や職域の幅が広がる可能性がある一方で、合理的配慮は前提になりません。
メリットとデメリットを整理すると次のとおりです。
| メリット | デメリット |
|---|---|
| 年収の幅が広い | 配慮前提ではない |
| 職域制限が少ない | 再発リスク管理が自己責任 |
| 昇進・評価基準が一般枠と同じ | 体調悪化時の説明が難しい |
クローズ就職では「障害を理由に評価が下がる」心配は減りますが、その分働き方の自己設計が不可欠になります。提示年収だけで判断せず、残業時間、オンコール頻度、プロジェクト負荷などを総合的に確認する必要があります。
① 条件確認を徹底する
求人票には「残業月平均20時間」と記載されていても、繁忙期の実態は異なる場合があります。
面接では次の点を具体的に確認しておきましょう。
- 残業時間の実態(繁忙期・通常期)
- オンコールや夜間対応の有無
- 急な仕様変更や炎上案件の頻度
- 評価制度と目標設定の仕組み
ITエンジニア職はプロジェクト依存度が高く、チーム体制や納期状況によって業務負荷が大きく変動します。負荷変動が激しい職場は、クローズ就職では特にリスクが高くなります。
② 自己管理と再発防止の設計
クローズ就職では、体調悪化時に「障害を理由に配慮を求める」ことが難しくなります。そのため、自分で安定条件を把握しておくことが重要です。
- 睡眠時間を確保できる勤務形態か
- 在宅勤務やフレックス制度の有無
- 業務量がコントロール可能か
- 相談できる上司やチーム体制があるか
精神障害があるITエンジニアの場合、再発の多くは「業務過多」や「長時間残業」が引き金になります。無理を続けない設計を事前に行うことが、長期的な年収維持にもつながります。
③ 年収とリスクのバランスを考える
クローズ就職では、一般枠の給与テーブルが適用されるため、年収アップの可能性は広がります。しかし、提示年収が高い=安定とは限りません。例えば、
- 年収500万円だが残業月40時間
- 年収420万円だが残業月10時間
どちらが長期的に安定するかは人によって異なります。
精神障害がある場合は「短期的な年収」よりも継続できる環境かどうかを優先することが重要です。無理な環境で体調を崩せば、結果的に収入は下がります。年収とリスクのバランスを冷静に見極める視点が必要です。
面接前に準備すべきこと

精神障害があるITエンジニアが面接成功率を上げるには、感覚的な準備ではなく「構造化された準備」が不可欠です。特に開示の有無、合理的配慮の整理、業務遂行能力の言語化は事前にまとめておく必要があります。
準備不足のまま面接に臨むと、症状説明に時間を使いすぎたり、転職理由がネガティブに聞こえたりします。面接は評価の場であると同時に、働き方のすり合わせの場です。事前準備で差がつきます。
転職エージェントを活用すれば、模擬面接や回答添削を受けられます。サービス比較は転職エージェント比較記事を参考にしてください。
① 想定質問の準備
面接での失敗例は次のとおりです。
頻出質問は次の3つです。
- なぜ転職するのか
- どんな配慮が必要か
- 再発防止策は何か
回答は1〜2分以内でまとめます。構成は「結論 → 理由 → 具体例」の順が基本です。長すぎる説明や感情的な表現は不安材料になります。
② 職務経歴書と配慮事項の整理
面接前に必ず整理しておくべきなのは、「できること」と「安定条件」です。
精神障害があるITエンジニアの場合、スキルと配慮事項を混ぜて説明すると評価が下がります。まず業務遂行能力を明確に示し、その後に必要な配慮を論理的に伝える順序が重要です。
事前に紙に書き出して整理しておくと、面接本番で焦りにくくなります。
本気で転職するなら専門支援を活用

精神障害があるITエンジニアの面接では、開示戦略・配慮整理・条件確認を同時に進める必要があります。一人で準備すると「これで十分か分からない」という不安が残りやすいのが現実です。
精神障害があるITエンジニアが障害者雇用で転職を成功させる具体的な流れや、年収の現実、失敗しやすいポイントについては、障害者雇用でITエンジニアに転職できる?で詳しく解説しています。
障害者雇用に理解のあるエージェントを活用すれば、
まで支援を受けられます。
dodaチャレンジでは、精神障害の開示を前提にした面接対策や条件整理のサポートを行っています。準備段階から相談することで、面接通過率を高めることが可能です。
FAQ
Q1. 面接で精神障害は必ず伝えるべき?
障害者雇用枠では原則として開示が前提になります。企業は合理的配慮の提供義務を負っていますが、これは申告があって初めて機能します(出典:厚生労働省)。
一方、クローズ就職では法的に開示義務はありません。ただし、残業制限や在宅希望など明確な配慮が必要な場合は、開示せずに入社するとミスマッチが起こる可能性があります。重要なのは「診断名を伝えるか」ではなく、「業務上の制約があるかどうか」です。
書類段階・面接・内定後それぞれのメリットとリスクは、精神障害の開示タイミングはいつが正解?で詳しく比較しています。
Q2. 面接で不利になりますか?
結論として、伝え方次第です。精神障害そのものよりも、企業が重視するのは「安定して業務遂行できるかどうか」です。
例えば、
このような場合は不安要素になります。一方で、
のように具体性があれば、評価が下がるとは限りません。IT人材不足が続く市場では、スキルと再現性が重視されます。
Q3. 年収は下がりますか?
障害者雇用では、職域や勤務時間の制約から初年度年収が一般枠より低くなるケースもあります。ただし、一律に下がるわけではありません。
ITエンジニアの年収は「職種・工程・スキル水準・勤務形態」で決まります。開発経験やクラウドスキルがある場合、障害者雇用枠でも400万円以上の求人が提示されることもあります。
重要なのは、提示年収の高さではなく「継続可能な環境かどうか」です。無理な環境で体調を崩せば、結果的に収入は下がります。
Q4. 面接で緊張してうまく話せない場合はどうすればいい?
精神障害がある場合、面接緊張や不安症状が出ることもあります。事前に想定質問を書き出し、回答を1〜2分でまとめて練習すると安定します。
また、メモの持参やオンライン面接の活用も有効です。障害者雇用枠では、合理的配慮として面接方法の調整が可能な場合もあります。事前にエージェントへ相談すると安心です。
まとめ
精神障害があるITエンジニアにとって、面接は単なる選考ではなく「働き方を設計する場」です。重要なのは、スキルの具体性、安定して働ける根拠、合理的配慮の整理です。
開示するかどうかよりも、「自分が安定して働ける条件を把握しているか」が結果を左右します。事前準備を徹底し、必要であれば専門支援を活用することで、面接通過率は高められます。
焦らず、条件を整理し、自分に合う環境を選びましょう。



